サクセッションプランについて徹底解説!人材育成との違いや進め方・注意点も紹介


サクセッションプランについて徹底解説!人材育成との違いや進め方・注意点も紹介

近年、後継者を育成するため、サクセッションプランに注目する企業が増えています。サクセッションプランは、企業の将来を左右する重要な取り組みです。この記事では、サクセッションプランが注目される理由や推進するメリットを解説します。サクセッションプランを推進する方法や注意点も紹介するため、後継者の育成にお役立てください。

サクセッションプランとは

サクセッションプランとは、後継者の育成を目的とした教育です。サクセッションプランを推進するためには、客観的な視点で組織を分析し、企業を任せられそうな人材を選定しなければなりません。

サクセッションプランで選定された人材は、しかるべき部門や役職に配置され、将来を見越して育成されます。後継者となる候補者の確保・育成・活性化・定着の4つの工程を経て、サクセッションプランは進行します。

サクセッションプランと従来の人材育成との違い

サクセッションプランと人材育成では、育成の主体者と目的が異なります。

サクセッションプランは、企業の重要なポストを任せられる人材を育成することが目的です。企業を託すためには、専門性を高めたスペシャリストではなく、ジェネラリストの育成が重要となります。経営者が主体となり、経営者に要求されるあらゆるスキルを候補者に伝えなければなりません。

かつては、該当ポストに近い年次やキャリアなどから、後継者の候補を選抜しがちでした。しかし、年次やキャリアを重視して候補を選抜しても、有力な後継者に育つとは限りません。サクセッションプランでは、経営理念や経営戦略にマッチする人材の中から、ふさわしい後継者の候補を選びます。先に該当者をリスト化してから、育成していくのです。

一方、人材育成は企業力の底上げが目的です。人事部が主体となり、社員全体を対象とした研修や現場教育などを行います。

サクセッションプランが注目される理由

サクセッションプランは、1950年代のアメリカで誕生しました。当時のサクセッションプランの目的は、事業継承です。サクセッションプランは、CEOなどCxOクラスの後継者の計画的な育成に利用され、しだいに欧米に広まりました。

日本でサクセッションプランが注目されたきっかけは、2015年に東京証券取引所が策定したコーポレートガバナンスコードです。コーポレートガバナンスコードには、「CEO等の後継者計画の監督」が盛り込まれており、多くの企業にサクセッションプランが認知されました。

サクセッションプランのメリット

サクセッションプランに取り組むと、後継者不在のリスクを回避できます。スキルの乏しい人材が重要なポストに収まると、経営的に間違った判断を下しかねません。サクセッションプランを実施すると、カリスマ的経営者のワンマン経営ではなく、経営陣として優秀な人材を育成できます。経営幹部の能力向上により、企業価値も高まるでしょう。

サクセッションプランの推進方法

サクセッションプランを成功させるためには、どのような人材を選抜するかがポイントです。サクセッションプランの推進方法を紹介します。

経営戦略の明確化

今後自社が向かうべき方向性を確かめるために、経営戦略を明確にしましょう。経営理念や経営の基盤となる商品・サービスを、改めて振り返ってください。また、自社を取り巻く環境を調査することも大切です。

創業当初と比べると、企業が取り巻く環境が変わっている可能性は十分にあります。自社にとって大切なものを受け継いでいくためには、歴史を重んじる視点と、現在の状況を読み取る視点の両方が必要です。

対象とするポストの選定

経営戦略にもとづき、自社の成長に必要なポストを決めましょう。ポストを決める際は、経営層だけでなく、外部関係者の意見も取り入れます。

現在就任している人を見るのではなく、会社や部門にとっての重要度を考慮して、サクセッションプランの対象とするポストを選定することが大切です。戦略的に必要であれば、新たにポストを新設する必要があります。

ポストに対する人材要件の作成

選定したポストに求める役割や職務にもとづき、必要な人材要件を決めましょう。ポストに応じて、人材要件は異なります。まず、経営に関する知識・専門知識と実務経験・語学力・責任あるポストの経験など、スキル面の要件は欠かせません。

企業の存続のためには、他社や官公庁など社外の人脈も重要です。また、人間力も人材要件に含まれます。リーダーシップ・コミュニケーションスキル・真面目さ・根気強さなども、人材要件に組み込みましょう。

サクセッションプラン対象者の選抜

サクセッションプランの対象者は、既存の人事システム内の情報から選抜します。プロジェクト経験・異動歴・実務歴・企業特有のスキルの有無やレベルなどで評価し、該当ポストの候補者を選抜しましょう。

既存システムから選抜できなければ、人材要件に沿ってアセスメント(評価)を行います。アセスメントは、試験方式で実施します。論文や面接、ロールプレイ、ディスカッションなど、複数の方法で対象者を評価しましょう。

候補者の育成

候補者ごと、もしくは社員ごとに個別の育成案が必要です。人によって伸ばすべき強み、強化が必要な弱みは、それぞれ異なるためです。

人事ローテーションを実施すると、人脈の強化や複数部門における実務経験の蓄積が見込めます。子会社や関係会社の経営、大規模なプロジェクトのリーダーなど、リーダー体験も候補者の育成に有効です。

候補者の育成には、外部機関の利用もおすすめです。専門の講師のもとで研修を受けると、自社では育成が難しい部分をカバーできます。見識が深まれば、視野の広い後継者の育成が可能です。

サクセッションプランを推進する上での注意点

サクセッションプランを成功させるために、ポストや人材は慎重に選抜しましょう。サクセッションプランを推進する上での注意点を紹介します。

対象ポストの要件作成は経営層・部門長・人事の三者で行う

サクセッションプランの対象ポストや人材要件の作成は、人事部だけでなく経営層・部門長・人事部の三者合同で行います。

サクセッションプランは、本来経営者が主体となって行うものです。基本は、現場の部門長が中心となり、人事部がサポート、経営層が監督という形式でポストの選定を進めましょう。

また、人事部には、候補者に対する定期的なヒアリングとケアも求められます。経営層からの期待やプレッシャーが強すぎないか、人事の目線でサクセッションプランをサポートしましょう。

人材の選抜はポテンシャルも考慮する

すぐに着任可能な人材に絞らず、長期的に登用の可能性がある人材も選抜の対象に含めましょう。近年は、若手のうちから候補者を育成していく前提で、早い段階で多くの人材を確保しておく企業が増えています。

「すぐにポストへの登用が可能」「1〜3年後に登用の可能性あり」「将来的には可能性あり」など、レベルごとに候補者を選抜すると、自社の人的資本を整理できます。

経営陣となる熱意や自社を繁栄させようとする強い思い、ほかの社員への思いやりなども重視して人材を選抜しましょう。スキルのみで選抜せず、企業を大切に考えてくれる人材を育成することが重要です。

定期評価を行う

対象者の育成開始後は、定期的な評価が必要です。サクセッションプランの成功に向け、経営陣にも定期評価に参加してもらいましょう。

定期評価では育成の進捗状況を可視化し、進捗に遅れがあれば、プランを見直しましょう。不要と思われるプランがあれば、削除を検討しても構いません。また、社会や業界の動向によっても、プランを見直しましょう。時代に合う後継者がいなければ、企業の存続が難しいためです。

選外の社員にも配慮する

サクセッションプランの導入と同時に、選ばれなかった社員への対応も検討しましょう。基準に未達であったと感じてしまうと、社員の仕事へのモチベーションが低下しかねません。

サクセッションプランの対象者に対し、明確に通知を出さない企業もあります。事前に通知を出すと明言しておくと、選ばれなかった社員が失望するおそれがあるためです。また、個別の育成計画を実施するうちに、選抜者はそれとなく経営層の期待を感じ取ると予想されます。各部門での実務経験、責任あるポジションの経験、経営の疑似体験などを通じて、後継者の育成を進めましょう。

まとめ

サクセッションプランを実行すると、後継者不在のリスクを回避できます。経営戦略の明確化、対象とするポストの選定、人材要件の作成を経て、後継者にふさわしい人材を育成しましょう。

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