組織開発の概要について解説!目的や手法、企業事例などを紹介


組織開発の概要について解説!目的や手法、企業事例などを紹介

企業の生産性や事業の業務効率化を進めるには、人材開発だけでなく「組織開発」に着手する必要があります。しかし、組織開発という言葉の意味や目的を正確に理解できていなければ、その効果を引き出すことは難しいでしょう。
本記事では、組織開発の概要や目的、進める手法や手順などについて解説します。

組織開発の概要とは

組織開発とは、会社などの組織で働く人と人との関係性を深めて、自分たちで組織を活性化させる取り組みを行う、もしくはその支援を実施することを意味します。組織を活性化させることで、全体のパフォーマンスを向上させたり、働きやすい環境への変革などを進めたりするのが特徴です。

組織開発では実際に組織が課題としている点を洗い出し、そのうえで解決策を組織内の人たちで考案・実行するまでの流れも該当します。組織開発における課題解決の手法は複数あるため、自社の組織に適したものを選ぶことがポイントです。

英語での(Organization Development)の意味について

組織開発は、「OD」と省略されても呼ばれることもあります。こちらは英語の「Organization Development」を省略した呼称です。組織開発自体が1950年代のアメリカで誕生したものであるため、英語の略称が使用されています。

人材開発とは

組織開発について考える際には、「人材開発」についても知る必要があります。人材開発とは、組織のなかで働く人材の能力を向上させ、仕事へのパフォーマンスを高めることを目的とした施策です。組織開発は組織そのものを開発し、改善を加えて課題を解決していく手法です。一方で人材開発は、組織開発と違って個人単位で開発を進め、最終的に組織の成果として還元するという流れが基本です。

組織開発と人材開発の違い

人材開発は、基本として開発対象を「個人」に限定したうえで、社内研修・OJT・セミナーなどによる手法でスキルの獲得や能力の向上を目指します。対して組織開発は「個人」そのものではなく、人と人の間に生まれる「関係性」や「相互作用」といったものを対象に、改善や改革を進める手法となっています。開発単位が「組織全体」なのか「個人の社員」なのかが、組織開発と人材開発の主な違いです。

組織開発が注目される理由

個人の働き方が多様化している社会背景が、組織開発に注目が集まっている理由の1つです。個人が自分のライフワークや能力開発を重視して働くことが当たり前となりつつある現代では、組織もそれに合わせて変化することが求められています。

たとえば、社員のパフォーマンスを高めるためにフレックスタイム制を導入したり、Web会議ツールなどを活用してテレワークを推進したりと、今の時代に合わせた組織に変化していくことが重要となっています。個人を活かすための組織として変化・改善していくための手段として、組織開発は今後も多くの企業に注目されるでしょう。

組織開発の目的とは?

組織開発の目的は、主に人事部門が抱える課題やミッションをクリアすることになります。たとえば、社員のエンゲージメント上昇による早期退職の回避、上司と部下の人間関係の改善によるチームワークの構築など、企業によってさまざまな内容が組織開発の目的になり得ます。

自社の強みの源泉となる「組織力」の向上を目指し、そのために解決すべき課題の把握と方法の把握が、組織開発の目的です。そのため組織開発を進める際には、自社が解決すべき課題を正確に理解して共有するプロセスが重要となります。

組織開発を効果的に進める手法

組織開発を効果的に進めるには、以下のような手法の活用が重要です。

1.コーチング

コーチングとは、社員が自主的に行動を起こせるように支援する手法です。社員の意見や考え方をしっかりと聞きつつ、仕事の観察や質問を通して課題をみつけ、必要に応じて提案などを実施します。コーチングでは現状の課題を確認したうえで目的となる状態を設定し、成果を邪魔する存在の把握と必要とされるリソースの確保を行い、計画を構築するのが基本的な流れです。

2.AI

AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)とは、社員個人が持つ価値や強みを発見し、組織全体の価値に還元していく手法です。「インクワイアリー」には「問いかける」や「発見」などの意味があり、社員それぞれの価値を見出すためのステップを指します。アプリシエイティブでは発見した価値を理解して認め、組織の能力を最大限に引き出すための仕組みを考え出すことを目指します。

アプリシエイティブとインクワイアリーという2つのプロセスを通して組織開発を進め、新しい文化や仕組みを構築するのが特徴です。

3.ワールドカフェ

ワールドカフェとは、カフェのようにリラックスできる空気を組織内で構成し、柔らかな雰囲気のなかで会議やディスカッションを行う手法です。複数のテーブルを用意し、少人数に別れて話し合いを行うことで、新しいアイデアの発見や問題解決につながる考え方の共有を進めます。テーブルのメンバーは定期的に交代し、可能な限り組織内のさまざまな人たちと話しをするように促します。

ワールドカフェは、仮に1,000人を超える人数を保有する組織でも、有益な会議を可能とする手法として注目されています。

4.フューチャーサーチ

フューチャーサーチとは、大規模の対話を通して組織開発を進める方法論です。1987年に組織開発コンサルティングを進めていたマーヴィン・ワイスボード氏とサンドラ・ジャノフ氏によって提唱された手法で、組織開発に関係するステークホルダーを集め、互いの利害関係などを考えず単純に課題解決法や必要な行動を話し合うのが特徴となっています。

フューチャーサーチは短時間の会議では終わらず、数日間かけて話し合いを続けることもあるのが特徴です。多数決で答えを決めるようなことはせず、全員が納得できる回答を導き出すことを目指します。

5.7S

7Sとは、企業戦略を考案する際に関係するさまざまな要素をピックアップし、相互関係を把握できるようにまとめるフレームワークです。7Sとは、「ハードの3S」と「ソフトの4S」の2種類で構成され、具体的には以下の項目に分類されます。

<ハードの3S>
・Strategy(戦略):企業の方向性や経営課題の解決を進めること
・Structure(組織構造):組織の形態や構造のこと
・System(システム):人事評価や採用手法など、社員の能力を活かすための手法のこと

<ソフトの4S>
・Shared Value(価値観の共有):価値観を共有するための具体的なビジョンのこと
・Staff(人材):組織における価値観や目的を共有する社員のこと
・Style(組織の風土):企業文化や独自の社風のこと
・Skill(能力):組織で所有するノウハウや経験、知識・技術のこと

上記の要素を組織開発に活用し、改善や改革を進めることも1つの手法となります。

組織開発を行うための手順

組織開発を実施するには、以下の手順が基本となります。

目的を定める

組織開発では、まず最初に実施の目的を設定します。何のために組織開発を行うのか、なぜ組織開発が今必要なのかを明確にし、組織内で共有します。上層部の意見や考え方だけを反映させるのではなく、現場の社員の意見も積極的に取り入れて、意味のある目的設定を目指します。

現状を知る

組織開発の目的を決めたら、続いて自社および組織の現場把握を進めます。今現在自社・組織がどのような問題を抱えているのか、優先して解決すべき課題は何かといった点を洗い出します。現状把握にはインタビューやサーベイ(アンケート)などを実施し、社員の声を直接聞き出す施策を導入するのがポイントです。

課題を決める

組織開発では、解決すべき課題を明確に把握したうえで、必要なアクションを実施します。課題に対して必要な解決策を見つけ出し、1つずつ確実に解決していくことが重要です。組織の課題には複数の問題が同時に関係しているケースもあるため、原因の特定を正確に進める必要があります。

試験的に小規模なスタートを行う

組織開発はいきなり大規模な計画を進めるのではなく、試験的に小規模な計画からはじめるのが基本です。スモールスタートを意識して、コストや時間をかけずに課題解決を実現できるように努めます。スモールスタートなら実際の行動の成果を素早く把握し、次の行動へのフィードバックが行えます。細かな修正を加えながら効果的な施策を実行できるため、組織開発を効率良く実現可能です。

問題解決に向けてのアクションプランを作成

組織における問題の解決に必要となる、具体的なアクションプランを作成します。アクションプランはいきなり実行するのではなく、いくつかの案をピックアップしたうえで必要とされるものを選択します。

効果を検証し振り返る

アクションプランの成果を確認し、成功したのか失敗したのか、改善点は何かといった点を検証してフィードバックします。検証とフィードバックを繰り返すことで、組織開発の目的達成および理想的な組織の構築をスムーズに進められるでしょう。

まとめ

自社の組織を現代社会で通用する形に成長させるためには、組織開発が欠かせません。組織開発は1人の力では達成できないため、その基本や重要性を社員たちに説明し、社内全体で取り組めるように計画するのがポイントです。本記事の内容を参考に、組織開発の必要性や手順をチェックしてみてください。

組織開発を効率良く実施するには、タレントバレットの「組織診断機能」を活用するのがおすすめです。組織診断機能は組織の課題発見から改善までを一気通貫で支援し、リアルタイムでの状況把握と課題解決をサポートします。この機会にタレントパレットの組織診断機能を導入し、組織開発に活かしてみてはいかがでしょうか。