従業員満足度アンケートを実施する方法 | 必要項目や集計・分析の手順を解説


従業員満足度アンケートを実施する方法 | 必要項目や集計・分析の手順を解説

「社員が企業のことをどう思っているのか」「労働環境や待遇に満足しているのか」といった点を把握することは、重要なプロセスです。近年は正確に社員の考えを把握するために、「従業員満足度アンケート」を実施して本音をチェックする企業が増えています。本記事では従業員満足度アンケートの概要と実施する目的、具体的な手順や注意点などについて解説します。

従業員満足度アンケートとは?

まずは従業員満足度アンケートの基本的概要について、以下で解説します。

自社に対しての満足度を計測する方法

従業員満足度アンケートとは、社員が自社に対してどのような評価を持っているのかを計測する方法の1つです。非対面によるアンケート形式であるため、直接の面談では聞き出しにくい本音を把握しやすいです。

回答した社員の匿名性も守れるため、忌憚のない意見を収集できるのが従業員満足度アンケートの特徴です。

従業員満足度アンケートを実施する目的

従業員満足度アンケートを実施することには、さまざまな目的が考えられます。以下では、従業員満足度アンケートを実施する際の目的になり得る要素を紹介します。

社員が抱える不満や不公平感を把握する

従業員満足度アンケートは、社員が自社に対して感じている不満や不公平感などを把握するために実施されます。直接は伝えにくいことでもアンケートなら比較的気軽に指摘できるため、自社へのマイナス要素を把握する目的に使用されることが多いです。

自分を雇用している企業の批判は、社員にとってリスクになり得ます。そこで従業員満足度アンケートを活用し、匿名による回答形式で意見を集めるケースが増えています。

問題の多い部分を浮き彫りにする

複数の社員から従業員満足度アンケートを収集して、企業の問題となっている要因を特定することも目的になります。問題として指摘されることが多い部分を浮き彫りにすることで、具体的な対策を立てやすくなる点がメリットです。

企業が認識していた問題と、社員が感じている問題にズレが生じている場合、アンケート結果を参考に修正を加えることができます。

従業員満足度アンケートで理解すべき「二要因理論」について

従業員満足度アンケートを実施する際には、「二要因理論」を理解する必要があります。以下では、二要因理論の基本について解説します。

二要因理論とは?

二要因理論とは、フレデリック・ハーズバーグ氏が提唱した社員の満足度を左右する要因のことです。満足に影響する要因である「動機付け要因」と、不満に影響する「衛生要因」の2種類があると定義されています。

どのような要素が社員の満足・不満を生み出すのか把握するためにも、従業員満足度アンケートを実施する際には二要因理論の理解は重要なプロセスです。

「動機付け要因」の概要

二要因理論における「動機付け要因」とは、社員の満足に影響する要素を指します。例えば「業務内容」「目的の達成度」「社内での必要性(承認欲求)」「昇進や昇格」などが含まれます。

上記の要素に対するフォローや環境整備ができていないと、従業員満足度アンケートの結果は不満に偏る可能性が高くなります。

「衛生要因」の概要

二要因理論の「衛生要因」は、動機付け要因とは逆に社員の不満を生む原因になり得る要素を意味します。例えば「職場環境」「給与」「会社の経営方針」「人事評価」「人間関係」などが影響すると定義されます。

社員がどのような部分に不満を感じやすいのか把握することで、事前に対策が取りやすくなります。

従業員満足度アンケートを実施する手順

従業員満足度アンケートを実施する際には、以下の手順を参考にしてください。

従業員満足度アンケートの目的を明確にする

なぜ従業員満足度アンケートを実施するのか、結果をどのように活かしたいのかなどの目的を明確にするのが最初のステップです。目的が曖昧な状態でアンケートを実施しても、集計結果を活かす方法がみつけられない可能性があります。

実際に従業員満足度アンケートを実施したことで得られるメリットも想定し、目的の明確化に活かすのもポイントです。

従業員満足度アンケートの実施日・対象者・質問項目を設定する

目的の設定後は、従業員満足度アンケートを実施する日時、対象となる社員、質問項目を決定します。対象の社員や質問項目は、アンケートの目的にそったものに適宜修正するのがコツです。

従業員満足度アンケートは複数人でプロジェクトを計画し、正確な結果を得られる環境を構築する必要もあります。

アンケートを収集して結果を分析する

従業員満足度アンケートを期日内に収集してまとめ、内容を分析します。ただ結果を把握するだけでなく、その内容からみえてくる課題や社員の不満をピックアップして、解決策を考案するまでが基本の流れです。

アンケート結果からはさまざまな可能性を読み取れるため、なるべく多くの意見を参考に分析を進めるのが重要です。

従業員満足度アンケートを実施するメリットとは

従業員満足度アンケートの実施は、企業・社員にとって多くのメリットがあります。

社員のモチベーションアップにつながる

従業員満足度アンケートを実施して課題を把握し、解決に尽力することで社員の満足度を高められます。アンケートをきっかけにした行動が結果的に仕事のモチベーションアップにつながり、事業成果に良い影響を与えることにも期待できるでしょう。

社員の身近にある課題が解決されれば、それまで感じていた不満が解消され、仕事に集中できる環境を作ることにもつながります。

人材の流出を防止できる

従業員満足度アンケートを実施して不満の芽を早めに摘むことで、社員の退職を防止できる点もメリットです。退職者が増加傾向にある場合には、従業員満足度アンケートで不満点の把握と改善を速やかに進めるのが対策になります。

逆に従業員満足度アンケートを実施したにも関わらず、問題が解決されないままだと、社員は愛想を尽かして転職を決意するリスクがあります。

従業員満足度アンケートの作成におけるポイント・注意点

従業員満足度アンケートの内容は、以下のポイントと注意点を踏まえて作成するのがコツです。

匿名で回答できるようにする

従業員満足度アンケートは、回答者の匿名性を守るのが基本です。記名が必要だと会社への不満を発言しにくくなり、本音を引き出せない可能性が高まります。

名前の記入は原則不要とし、文字で誰か分からないようにパソコンで回答可能とするなどの工夫が求められます。

従業員満足度アンケートは定期的に実施する

従業員満足度アンケートは一度だけでなく、定期的に実施するのが重要です。社員の不満や課題は変化するため、時間が経つことで新たな問題が発生する可能性があります。

その都度必要な対策を素早く実行できるように、こまめにアンケートを実施するのがポイントです。

従業員満足度アンケートの効果を明示する

従業員満足度アンケートをもとに施策を行った際には、寄せられた意見と具体的な対応を明らかにするのが重要です。従業員満足度アンケートの回答内容が実際に活かされていることを明示できれば、その効果を上層部や社員に対して証明できます。

また、フィードバックがもたらされることで、社員の満足度向上や次回アンケートへの積極的な参加にも期待できます。

従業員満足度アンケートに必要な質問項目

従業員満足度アンケートを実施する際には、以下の質問項目を作成することで効果を引き出しやすくなります。

従業員満足度アンケートの質問項目の事例

従業員満足度アンケートには、以下の質問項目を作成することが考えられます。

回答者の属性(性別、年齢、所属部署、勤続年数など)
動機付け要因(仕事のやりがい、難易度、貢献度、存在意義など)
衛生要因(経営理念への感情、企業に期待すること、給与や福利厚生への納得感、ストレスなど)
人間関係の項目(コミュニケーションの悩み、上司や部下との関係性、指導や教育における課題など)

上記の要素を把握することで、課題がどこにあるのか、どのような対処が必要なのかを判断しやすくなるでしょう。

従業員満足度アンケートの集計・分析方法

従業員満足度アンケートのメリットを活かすには、集計方法と分析方法について把握しておくのも重要です。

「単純集計」による内容の把握

単純集計とは、アンケートに採用した項目ごとに合計値と平均値を確認し、全体像を把握する集計方法です。明確かつ簡単にアンケートの集計を進められる点が特徴で、素早く対策に乗り出せます。

一方で、課題を抱える社員の特徴や傾向などを、深掘りすることは難しいです。

「クロス分析」による傾向の把握

クロス分析とは、年齢や性別などの条件で回答を分類し、それぞれにどのような傾向がみられるかを判断する分析手法です。特定の条件を持つ社員について、重点的に分析したい場合などに役立つ方法となります。

特定の社員について深く把握できる分、全体像の理解が困難となる可能性があります。

「構造分析」による相関係数を用いた分析

構造分析とは、項目間における相関係数(相互関係や因果関係)を抽出して分析する手法を意味します。社員の満足度に影響を与えている要素を把握したり、満足度の高い社員の特徴や傾向を分析したりできるのが特徴です。

目的を達成するための具体的な方法を考案する際には、構造分析を実施して社員と関連性の強い要素をピックアップすることが検討されます。

まとめ

社員の抱えている課題や不満を正確に把握するには、従業員満足度アンケートの実施が有効です。人事だけでは把握しきれない問題を知るきっかけになるため、定期的にアンケートを行う習慣を企業として確立することも検討されます。この機会に従業員満足度アンケートの有効性や手順をチェックし、回答結果を自社の改善に活かしてみてはいかがでしょうか。